記者の眼記者の眼

第225回 (2023年12月13日)

 カシューナッツの殻に熱視線が注がれている。栄養価の高いナッツを覆う殻は油分を多く含んでおり、バイオマス燃料としての利用が期待されているのだ。再生可能エネルギー電力買取制度の対象となったこともあり、それまで「ゴミ」だった殻の引き合いが強まっている。

 

 カシューナッツといえば10年ほど前、知人と飲食店でそれをつまんでいると、彼が「芥川龍之介を思い出す」とぼそり。突然の謎かけに困惑しその心を問うと、カシューの実が芥川の代表作『鼻』に出てくる高僧の大きな鷲鼻にそっくりだという。

 

 「長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い」というその鼻の描写は確かに、スマホに映し出されたカシューの実の画像を説明したかの様。豊富な経験と自在な連想が織り成す諧謔が印象に残った。

 

 ふと思い立ち、同じ謎かけを流行りの対話型AI(人工知能)に振ってみた。すると、「どちらも異なる文脈やジャンルに関連しているようですが、具体的な関係について教えていただけますか?」と狼狽気味だ。期せずして人間の方が一枚上手だと知らしめる好機が巡ってきた!

 

 「どちらも芥(ゴミ)を戴いています」。捻り出した答えをぶつけてみると、「芥川龍之介の『芥』はゴミを指し、カシューナッツの『カシュー』は『花のかご』や『果物のかご』を意味することがあります。両者が『芥』を共有する点で遊び心が感じられますね」。......少々無理があったか。

 

 

(須藤)

 

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