記者の眼記者の眼

第219回 (2023年11月1日)

 中国では新型コロナウイルス対策を全面解禁して以降、経済不況が続いている。コロナの影響で職を失った人々も多く、全国で負債を抱える人の数が8億人に達しているとの報道もあった。

 

 こうした状況において、人々が大金を投資に振り向ける意識は極めて薄く、なかでも不動産業界の「崩壊」が際立っている。恒大グループをはじめ、国内大手不動産会社の経営破綻が相次ぐ。一部のデータによると、中国で余剰になっている住宅の収容人数は、全人口の3倍となっているという。

 

 不動産不況に歯止めがかからないなかで、私がレポートを担当する石油化学業界でも、多くの製品で需要が後退している。需要が後退しているにもかかわらず、原油など原料コストが上昇しており、石化メーカーの採算は悪化。中国だけではなく、世界中で経済情勢が低迷しており、中国企業は石化製品を輸出に振り向けることもできない状況だ。

 

 こうした状況下、ナフサクラッカーをはじめ、複数の石化設備の稼働は低水準を維持している。しかし、ここ数年、中国では新規の石化設備の立ち上げが続いており、供給余剰状態となっている。

 

 専門家の間では、中国の不動産不況は2024年まで続くとの意見がある。中国の景気回復には一年以上かかるとの見方も多く、石化業界の立ち直りにも時間がかかりそうだ。石化担当記者として、その動向をしっかりと見つめていきたいと思う。

 

(金)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp