記者の眼記者の眼

第171回 (2022年11月9日)

 地球の誕生から約45億年。現生人類の始まりとされるホモ・サピエンスがアフリカの地に姿を現したのは、今から約20万年前のこと。この惑星の45億年を1年間の尺に当てはめてみると、人類の誕生は1231日午後1137分時点に相当するという。我々の残した繁栄の軌跡など、わずか23分間の出来事にすぎないようだ。天文学の時間軸に沿うならば、人ひとりの生きる数十年は地球にとっての一瞬である。

 

 人生の儚さに落胆するかもしれない。それでも、次に訪れる1秒が二度と戻らぬ1秒であるという事実は、45億年の歴史を通じて普遍であるはずだ。今というこの時は次の瞬間には過去となる。時間の流れのなかで万物は変化を繰り返す。最近では、江戸川で眺める秋の夕暮れが私にそれを実感させてくれる。闇夜に怯える真っ赤な太陽。散光を包む千切れ雲。河面に映える橙色。逆光に踊るススキの穂。同じ瞬間は二度とない。自らの生に悦びを感じる貴重な一時だ。

 

 我々は変化のなかに生きている。毎日は変化で満ち溢れている。記者の仕事に就いてから1年が経つが、日々のエネルギー市場もまた変化が著しい。世界各国の政情、経済政策、紛争、気象、現在では疫病までもがその時々の需給バランスに影響を与えている。人類の英知が築き上げたこの巨大な市場システムに興味が湧くばかりだ。日々変化するマーケット動向を目の当たりにできることには、記者としての醍醐味を覚えてならない。

 

(山根)

 

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