記者の眼記者の眼

第109回 (2020年12月23日)

 早いもので、当欄も今年最後の更新となる。そこで1年を振り返りたい。新型コロナウイルスの流行以来、担当した多くの記者が触れてきたが、やはり新型コロナと生活環境の変化は外せない。

 

 今年は多くの人が年中行事を果たせず、季節感を味わうことなく過ごしたのではないか。花見に始まり、甲子園、花火大会も中止。年末年始の帰省も自粛が呼びかけられている。普段は在宅で仕事をし、出前や通販を活用すれば、外出せずに数日過ごせるとあって不便を感じないが、気づけばもう年末。外では木枯らしが吹く。

 

 私が担当する石油化学業界の動きはどうか。感染拡大の初期、自動車など大規模工場が停止した。多くの石化製品は、耐久消費財向け中心に需要が急速に落ち込んだ。一方、家ナカ需要の拡大、飲食業のテイクアウト対応で食品包材需要はむしろ堅調で、需要構造に大きな変化があった。供給面では8月末にハリケーンが米国を直撃し送電網が寸断し、石化設備が軒並み停止。米国からの供給はやっと回復の兆しをみせつつあるが、世界的に影響が出たことが印象深い。ハリケーンという言葉に「夏」という季節感を感じる。

 

 自身は写真の保管にクラウドサービスを利用しているが、過去の同じ日を振り返りましょう、という通知が送られてくる。その日の写真はあまりに遠い世界で、懐かしくもあり、歯がゆくもある。来年は当欄の読者の皆様に季節感のある日常が戻ることを祈りつつ、筆を置きたい。

  

(北村)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp