記者の眼記者の眼

第266回 (2024年10月9日)

 数カ月前、私の住んでいるシンガポールで石油流出事故が発生した。614日、浚渫船がバンカー(船舶用燃料)補給船に衝突。後者の石油タンクが破裂し、約400トンの低硫黄重油が海上に流出した。油はすぐにセントーサ島やシンガポール本土沿岸を含む複数の海岸に広がり、完全に除去するまでに約2カ月間もかかった。また、海洋生物にも被害が広がったようだ。

 

 シンガポールは世界で最も繁忙な港湾のひとつで、政府は油濁汚染を抑制するために厳しい安全対策をとっているが、流出を完全に防止することはできていない。今回は流出した石油の拡散を食い止めるための迅速な対応とその後の除去作業のおかげで、被害は最小限にとどまった。石油は現代生活において重要なエネルギー源ではあるが、このような事故を防ぐための対策が講じられても、依然として防ぐことはできない。地球環境を害するリスクを冒してまで、石油に頼る価値があるのか、自分もよく考えている。

 

 シンガポールは、低炭素エネルギーの開発や輸入に力を入れており、石油や石炭よりクリーンな天然ガスを発電用燃料として使っている。また、太陽光発電や水素などのクリーンエネルギーにも投資している。交通分野では、2040年までに内燃機関の自動車の廃止に取り組んでいる。これらの取り組みが世界のCO2排出量の削減に貢献できることを願っている。

  

(チーセン)

 

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