環境研・環境省=21年のメタン平均濃度、過去最大の増加量
環境研究所と環境省は10日、全大気(*1)中のメタンの平均濃度が2021年に1,857ppbと、20年から17ppb(*2)増え、年間増加量が11年以降で過去最大となったと発表した。環境研・環境省が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で運用する温室効果ガス観測用の人工衛星「いぶき」の観測データで分かった。発表によると、近年のメタン濃度上昇の原因はまだ明らかになっていないという。一方で、「このような濃度上昇をもたらす要因が、将来のメタン濃度の予測やパリ協定に基づく各国の排出削減施策の実施状況の確認などにおいて、大きな問題となる可能性がある」と指摘した。昨年11月に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、メタンの排出削減に関するグローバル・メタン・プレッジが創設され、メタンの濃度監視や排出管理の重要性が改めて注目を集めている。
環境省によるとメタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍。地表面だけでなく上空も観測するいぶきのデータでは、21年の年間増加量である17ppbは、11~20年の年間増加量の平均8ppbの2倍。一方、地表面のメタン濃度については、米国海洋大気庁の解析により2019年から2020年に急上昇したことが明らかになっていた。環境研・環境省は「今回のいぶきの観測結果により、メタン濃度の上昇が地表面付近だけでなく地球大気全体に及んでいたことを示唆している」とした。 グローバル・メタン・プレッジへの日本の参加について外務省と農林水産省、経済産業省、環境省は昨年9月、共同で声明を発表し、「グローバル・メタン・プレッジは、世界全体のメタン削減に向けた政治的機運を高める上で有意義なイニシアティブである」との見解を示した。加えて、同声明では「今般のグローバル・メタン・プレッジは各国に個別の目標やセクター別のコミットメントを求めるものではなく、世界全体での削減目標を設定しており、本プレッジへの参加に伴い、現在策定中の地球温暖化対策計画をはじめとする日本の取り組みに加えて、追加的取り組みを実施する必要が生じることにはならない」と説明している。 政府は昨年10月に閣議決定した地球温暖化対策計画にメタンの排出量を30年度に13年度比で11%減とする目標を盛り込んだ。
*1: 地表面だけでなく上空まで含めたすべての大気 *2: 公害物質の含有率などに使用される単位で、1ppbは10憶分の1
表の出所: 環境研究所・環境省 報道発表資料
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