新春特集=SSの現場、次の展開を模索
2021年に出光興産の象徴となるブランド・アポロステーションが誕生した。19年に出光興産と昭和シェル石油が経営統合して以降、旧出光系と旧シェル系のSSが併存してきたが、21年4月になってようやくSSブランドの統合が進んだ。さらに統合を機に、アポロステーションは「スマートよろずや」を目指す。地域の何でも屋として、地域の燃料販売からプラスαのコミュニティの場を模索する計画だ。旧昭シェは特に地方の商社や老舗店と結びつきが強く、地域経済を牽引する販売特約店が多いのが特徴だ。「地元銀行や県庁や市役所など結びつきも強く、地域発展に寄与してきた特約販売店も多い」(出光興産関係者)とし、ガソリン需要が減退するなか、既存SSがいかにコミュニティ発展に関与できるか、同社の挑戦は続く。
2021年にはコロナ禍ならではのサービスとして、非接触型の決済などを新しいサービスとして打ち立てる小売店も現れた。ENEOSは非接触POSの導入、リモート接客を行う実証実験を東京都杉並区で開始している。
ETCの多目的な利用サービスを手掛けるETCソリューションズ社は、ETCを利用して高速道路以外の料金決済を可能にするサービス「ETCX」を4月29日から始めた。11月22日時点では東海地方を中心に有料道路2カ所、SS1カ所がこのシステムを導入している。SSで唯一このサービスを導入しているプライベートブランドのオイルバンク担当者によると、「カードですべて決済できるので、手を汚したくない、コロナ禍でスタッフと接点を持ちたくない主婦層などに浸透している」という。
三菱商事エネルギー、TOUCH TO GO、タツノの3社はSSに無人コンビニ設置を目的として7月に業務提携契約を結んだ。三菱商事エネが株式の46%を保有する太陽礦油はこの年の9月、千葉新港SS内に無人決済のコンビニエンスストアを導入する。以前から一部の大型SSでコンビニを併設する流れはあったが、無人コンビニの導入は新たな可能性を生み出している。今回の新サービスはトラックドライバーを意識したサービスだ。大型トラックが駐車できる場所が限られているため、トラックドライバーは通常の飲食店やコンビニを探すのに苦労する場合が多く、コロナ禍で飲食店の営業時間が短縮したことで、より一層ドライバーの食事場所が限定されてしまうなどの問題が発生している。大型SS内に無人決済型のコンビニを併設し、駐車場所や食事面の問題解決に動き、ガソリンに比べて需要が維持される軽油販売の安定化、需要確保を狙う。三菱商事エネは今後、このサービスの全国展開を目指す。
伊藤忠エネクスは軽油の代替燃料となるGTL燃料の拡販に動いている。京浜地区や中京地区のタンクにGTL燃料を輸入し、工事現場などに配送していたが、2021年上期に広島市内や北九州市内のタンクを借り、出荷拠点を増やした。さらに北海道でも出荷拠点を設け、営業地区を拡げる方針を発表している。
GTLとはGas to Liquidsの略称で、天然ガス由来の環境負荷が少ない軽油代替燃料。伊藤忠エネはマレーシアのShell MDSと契約し、国内に輸入している。「オフロード」と呼ばれる公道ではない道で使用でき、主に建設機械や重機、フォークリフト、発電機、構内車両用のエコ燃料として、昨今では需要が増している。
同社は今期にトラックの塗装事業に参入したほか、トラック売買事業の拡大とトラックオークション市場参入なども検討するなど、軽油関連事業に力を入れている。ガソリン需要の減退に対し、減退が緩やかな軽油需要の囲い込みに各社とも小売事業はもとより、その周辺事業のサービス見直しを進めている。