新春特集=2021年の原油価格、7年ぶりの高値に
2021年の原油市場は年初から上昇基調を続け、ニューヨーク市場の原油先物「ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)」は、10月17日に1バレル83ドル台後半と、一時7年ぶりの高値を付けた。年初来の上昇率は約74%だ。その後、市場は下落基調に転じたものの、それでも1バレル70ドル前後の水準を維持している(下記チャート参照)。
原油高の背景には、需給の引き締まりが挙げられる。新型コロナ感染から世界経済が回復し、原油需要が回復するするなか、産油国の増産ペースが追い付かず、需給が引き締まった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成するOPECプラスは、日量40万バレルの増産を打ち出したものの、大幅な生産の拡大には消極的な姿勢を示している。加えて、2021年の春先以降、世界的に石炭や天然ガスの価格が高騰したため、一部で代替として原油需要が増加したことも原油価格の上昇につながったようだ。
さらに、世界的に脱炭素の動きが加速しており、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが進んだ結果、新規の原油開発が進まず、原油の供給が抑えられる一因となった。
ただ、原油価格は10月に高値を付けたが、その後は軟化している。11月に入り、米国が日本など石油消費国と協調し、戦略備蓄(SPR)の放出を決定した。米バイデン政権は12月に、国内ガソリン価格の引き下げとしてSPRから1,800万バレルの原油売却を発表している。さらに12月に入ると、新型肺炎の変異株オミクロン株の感染拡大懸念から原油相場は下落する局面もみられた。
2022年の原油価格の見通しについて、強弱両方の見方が散見される。石油事業への投資が進まず、供給が大きく増加する見通しがみられないうえ、OPECなど産油国の生産能力不足が原油価格を引き続き押し上げるとの見方がある。
一方で、コロナ変異株の感染拡大から行動規制が強化されるとエネルギー消費が抑えられ、2022年には需給が均衡し、価格は軟化するとの見通しも寄せられた。