新春特集=LNG価格、2021年は半年で6倍に
2021年はLNG相場が記録的な水準まで高騰した年となった。10月6日に北東アジア着相場は百万英国熱量単位(mmBtu)あたり40.20ドルと過去最高値を記録。7月以降、北東アジア向けの供給量が多いマレーシアや豪州、ロシアで複数の生産プロジェクトに設備障害が発生し、LNG供給が減少したことが相場上昇の要因として挙げられる。また、欧州の天然ガス相場が急騰したことも大きく影響した。
天然ガスとLNGは、需給と価格で密接に関連しており、天然ガス価格が上昇すればLNG価格も連動して切り上がる傾向にある。2021年後半は、欧州の天然ガス取引価格がアジアのLNG相場に多大な影響を与えた。
欧州では、オランダの天然ガス市況であるTTF(Title Transfer Facility)が近年、取引量を増やしており、欧州だけではなくアジアの天然ガスやLNG取引の指標となっている。そのTTFが10月5日、mmBtuあたり38.452ドルと過去最高値に達した。4月1日の時点で6.542ドルだった相場が半年で約6倍に達した。この相場急騰に北東アジア着のLNG相場が連動し、記録的な水準まで強含んだ格好だ。
TTF市況を始めとした欧州天然ガス市況の高騰は、欧州域内における天然ガスの供給懸念の強まりが背景にある。欧州では北西欧州を中心に、天然ガス在庫が例年に比べて低く推移した。
EU27カ国における天然ガス在庫は、2020年11月以降、寒波の影響で各地の気温が例年を下回ったほか、脱炭素に向けた動きが強まったことで天然ガス需要が増加した結果、2021年2月には過去2年の水準を下回る水準まで減少。その後、ロシアやノルウェーの欧州向け天然ガスの供給が増えず、在庫の積み上がりが進まなかったため、夏以降も例年に比べて在庫の低い状況が続き、秋口から供給懸念が強まる結果となった(下記グラフ参照)。