尿素クライシス(中)=アドブルー販売先顧客の選別、最終消費に影響も
車両用尿素水アドブルー需給の逼迫で、サプライヤーと需要家をつなぐ販売店による顧客の選別が始まっている。
サプライヤーからの供給が途絶えた販売店は「12月から客先を選んで販売を止めざるを得なくなっている」と、苦しい胸の内を明かした。すべての顧客に均等にアドブルーを販売していては、関係の深い需要家も守れなくなるとの危機感が強まっているという。
バックインボックス(BIB)の品薄で、にわかに切迫感が広がっているのが建設現場だ。油圧ショベルなどの建設機械にアドブルーを使用しているが、現場の建機にはBIBでしか給水できないケースが多いため、工事の中断に追い込まれる恐れが出ているという。工期を遅らせることができない建設会社からの注文が殺到しているが、優先順位が低く応じられない販売店が多くなっている。
影響は建機リース会社にも及んでいる。貸与した建機内のアドブルータンクが空の状態で返却されるため、次に貸す前に満タンにする必要がある。ところが、販売店からの仕入れが追い付かないため、建設会社に対し「アドブルー満タン返し」を要請しているようだ。アドブルーが不要な古い建機の貸し出しを希望する建設会社が増えているとの声も聞かれた。
自動車ディーラーからアドブルーを購入する配達会社は12月の納入量を8割カットされ、不足分を別の販売店からなんとか調達したようだ。年末にかけての書き入れ時に営業できない恐れもあったという。
大手レンタカーの店舗にもアドブルーの在庫が不足しているようだ。小型トラックを貸し出せない危機に直面するなど、アドブルー不足の影響が一般消費者にまで及び始めた。
かつては供給過剰で買い叩けば価格が下がったアドブルーが「これほど品薄になるとは夢にも思わなかった」と、大手販売店は困惑する。
一方、今後、アドブルー不足が懸念されているのが除雪車だ。豪雪地帯で除雪車が動かなければ、道路が通行できなくなる恐れがある。こうした事態を想定する大手サプライヤーは、「除雪車は公共バスなどと同様に重要な社会インフラ。麻痺することのないように最優先で供給することになる」とコメントした。
※『CROSSVIEW軽油』第90号(21年12月6日発行)でアドブルー関連記事「~三井化学が尿素増産も中国輸入減補えず、経産省「状況注視」~」を掲載しています。