尿素クライシス(上)=アドブルーBIB品薄危機的、買い注文殺到
日本の車両用尿素水アドブルーの品薄が危機的状況だ。
10月中旬から原料尿素の輸出規制を継続する中国からの輸入が激減し、アドブルー生産の不足が解消されない。伊藤忠エネクス、三井物産プラスチック、日本液炭、日星産業、新日本化成などアドブルーの主要サプライヤーが12月以降、相次いで出荷規制を強化するなど供給不安がいっそう高まっている。
まず出荷規制の対象になったのが、バックインボックス(BIB)と呼ばれる10~20リットルを箱詰めにした荷姿だ。在庫を受けてから出荷するまでのバックオーダーの処理に時間がかかり納期が「注文から1カ月ほど先」、「確約できない」とするサプライヤーがみられるほか、無期限の受注停止を余儀なくされるサプライヤーも出た。
BIBの生産を抑制しているメーカーがあるとの指摘もある。運送会社などの営業所に設置した中型バルクコンテナ(IBC)や、フリートサービスステーション(FSS)の計量器付き給水機(ディスペンサー)へのローリー配送向けを優先せざるを得ないという。梱包に手間がかかるなど供給効率が悪いこともボトルネックになったようだ。
BIBの買い注文が殺到したことが品薄に拍車をかけた。在庫の枯渇を不安視した需要家が在庫の積み増しを目的に販売店に一斉に注文を入れたため、サプライヤーの供給可能量をあっという間に上回った。あらかじめ設定されていた12月の購入枠の上限が未達にも拘わらず、容赦なく供給を絶たれ、「BIBが全く手に入らなくなった」とする販売店が続出した。
高値での転売を目的に商品を買い漁る、いわゆる「転バイヤー」も紛れ込んだとみられる。すでにオンラインショップでBIBは、通常の店頭価格の10倍以上の値段で取引されている。新型コロナウイルス感染が広がり始めた頃に、「転売目的で買い占められたマスクと同じ現象が起きている」と、市場関係者は口を揃える。
現在、こうした動きに対する法的な規制はなく、サプライヤーによる私的な制裁措置がとられている。オンラインショップでBIBを高値で出品していることが発覚した需要家が、販売元から取引を停止される騒動まで起きた。
※『CROSSVIEW軽油』第90号(21年12月6日発行)でアドブルー関連記事「~三井化学が尿素増産も中国輸入減補えず、経産省「状況注視」~」を掲載しています。