LPG=開幕迫る東京五輪、聖火トーチの総費用は9億円
9億6,654万7,099円。これが東京五輪(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会)における聖火トーチの製造に支払われた金額だ。技術の粋を集めたトーチの製作と、燃料となるLPG(液化石油ガス)および水素の供給には、これだけの費用がかかっている。沿道での見学は多くの地域で中止されたが、聖火リレーが無事に実施されたことに胸をなでおろす関係者は多いだろう。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて東京五輪自体が中止されていたら、この9億円以上の費用が台無しになっていたところだった。
今回の聖火リレーのために用意されたトーチは、約1万本と言われる。トーチの製造はENEOSグローブやLIXILなど5社連合が2018年7月に入札を通じて業務を受託した。燃料にはLPGを使用。さらに、福島など一部のリレー区間では、製造・燃焼に二酸化炭素を排出しない水素も使われ、脱炭素社会の実現を目指す日本のアピールに一役買っている。
一方、トーチ1本あたりのガス使用量や、ガスの単価について五輪組織委員会は回答を控えている。ENEOSグローブもこうした質問については、五輪組織委員会に窓口を一任しているという。大会の開催が目前に迫るなか、些末な質問にまでは対応していられないというのが実情だろう。
公式エンブレムの盗作疑惑、メイン競技場のデザイン変更、組織委員会会長の女性蔑視発言、トライアスロン競技の水質汚濁、そしてコロナ禍による緊急事態宣言など、これでもかというほどの問題を経て、東京五輪はようやく開幕を迎える。賽はすでに投げられた。あとはせめて、選手たちが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう祈るばかりである。なお、聖火リレーの実施運営業務は広告代理店の電通が入札を通じて受託しているが、この契約金額は「個別契約の締結にあたっての調整の中で毎期精査を実施」となっており、詳細は一見したところ公表されていない。