Jクレジット=RE100企業の買い殺到、入札価格急騰も「まだ安い」
Jクレジット制度事務局(みずほリサーチ&テクノロジーズ)がこのほど、今年4月に実施した再生可能エネルギー由来のJクレジットの入札販売結果を公表した。対象となった約20万t-CO2がt-CO2あたり平均2,536円で落札されたようだ。1月に行われた前回入札の平均落札価格2,191円から345円(15.7%)も上昇した。落札価格の中央値も2,700円と前回から550円(25.6%)切り上がった。26社が応札し、そのうち13社が落札した。
出所:Jクレジット制度事務局(みずほリサーチ&テクノロジーズ)
RE100企業の買い殺到で需給逼迫
「RE100企業が血眼になって探している」。入札に参加したJクレジット仲介業者は、落札価格が急騰した背景をこう語る。使用する電力を全量再エネで賄うことを目指す「RE100」に加盟する企業は、19年末時点で30社だったのが、21年6月24日時点で56社と、倍近くまで増えた。政府による20年10月の脱炭素宣言で企業の意識が大きく変わった。再エネJクレジットは、RE100目標の達成に使えるため、こうした企業による買いが殺到、需要がこの1年で急増した。
一方、再エネJクレジットの供給は頭打ちだ。主な創出源である家庭用太陽光発電の導入ブームが一巡、増加の見込みが立たない。既存の家庭用太陽光パネルも老朽化が進んでいるほか、ここ数年間でたびたび発生した自然災害で破損した設備も多く、「むしろ(再エネJクレジットの)供給は減少傾向にある」(市場関係者)との指摘もある。
需要の高まりに供給が追い付かず、需給が逼迫している。今回の入札で一定量落札した金融関連企業はすぐに販売先が決まったという。「持っていれば売れる」と、再エネJクレジットを求める需要家からの買い引き合いの強さにやや戸惑い気味だ。
非化石証書と価格逆転も
一般的な排出係数0.00047t-CO2/kWhを基に今回の平均落札価格のt-CO2あたり2,536円をkWhあたりに換算すると約1.19円、中央値の2,700円は約1.27円に相当する。これは「(再エネJクレジットと競合する)非化石証書の最低価格1.3円/kWhを下回る価格であれば、とりあえず買っておこうとする電力会社が多いことを示唆している」(Jクレジット仲介業者)という。
非化石証書は電源を特定(トラッキング)できていないと、RE100目標達成のために使うことが許されない。再エネ発電を行う電力会社は作業の煩雑さからトラッキングを忌避する傾向にあり、トラッキング付き非化石証書の供給が確保できるか不安がある。また、現状では、償却期限が年度内に限られている。翌年度以降に持ち越す、いわゆるバンキングが認められておらず、中長期的なRE100目標達成には使い勝手が悪いとの見方も強いようだ。
非化石証書のこうしたハードルが今後クリアされない限り、RE100企業は利便性の高い再エネJクレジットの買いに流れ、結果的に非化石証書との価格が逆転する可能性も十分にあるという。
次回落札は3,000円超えも視野
21年度期末にかけて企業の再エネJクレジットニーズはさらに高まるとみられており、22年1月実施予定の次回の入札価格は「下がることはない」と、市場参加者の見方は一致する。今回の落札価格について「まだ安い」、「次回は3,000円以上でないと落札できない」との声さえ挙がっている。
次回の再エネJクレジットの入札結果に市場の注目が集まっている。