廃食油=飼料向け規制強化、バイオ燃料・バイオプラ利用シフトへ
アフリカ大陸で猛威を振るうアフリカ豚熱(ASF)が、日本のバイオ燃料、バイオプラスチック業界に新たな動きを引き起こしそうだ。農林水産省は4月、ASFの感染防止を目的に、食品残さを利用した飼料の加熱処理基準を強化。併せて国内の食品製造工場などから出る廃食油も規制強化の対象となったため、飼料用に廃食油を販売するのを敬遠する動きが出始めている。行き場を失いつつある廃食油の新たな用途として、バイオ燃料、バイオプラスチックに注目が集まっている。
飼料利用の規制厳格化
「廃食油業界に激震が走った」。全国油脂事業協同組合連合会(全油連)の堀敦博専務理事は飼料の加熱処理基準の強化が決まった時のことを、こう振り返った。
アフリカ大陸で発生したASFが中国やロシアにまで感染が広がり、猛威を振るっている。「日本国内への侵入を許すと甚大な被害が出る」(農林水産省畜水産安全管理課)とみられている。
感染した動物の肉の残さなどを餌にすることで伝播するケースが確認されていることから、政府は4月から生肉を扱う事業者が排出した食品残さを飼料とする場合の加熱処理基準を厳格化した。
バイオ燃料やバイオプラ需要の取込み
規制強化の対象となる廃食油を販売する業者の処理負担増で、飼料向けの販売意欲が減退しているという。全油連によると、食品関連事業者が排出する年間42万トンの廃食油の約6割が鶏や豚などの飼料向けに販売されているが、今後、このシェアが縮小する可能性がある。
代わりの販路として期待されているのが、バイオ燃料やバイオプラスチックだ。
廃食油から作るバイオ燃料は、石油由来の燃料と比べCO2を9割程度抑えられるとされ、近年、需要が急速に高まっている。「実際に年間数千トンの廃食油を使用する2,000kW規模のバイオマス発電用の引き合いが全国で増えている」(全油連の堀専務理事)。
また、レジ袋の有料化でバイオプラスチック向けの需要も増加傾向にある。森林破壊を引き起こすことなどから風当たりの厳しいパーム油の代替として廃食油を求める動きが出ているという。こうした需要を取り込む動きが今後加速しそうだ。
供給掘り起こしが中長期の課題
一方、将来的には、廃食油の需要は供給を上回るとの見方もある。
ミドリムシを原料にしたバイオジェット燃料の開発に取り組むユーグレナ(東京都港区)は、2025年に立ち上げを予定するバイオ燃料商業プラント(生産能力約25万トン)で廃食油も主な原料として使用するが、「国内の供給だけでは限界がある」と指摘する。
需要過多となれば、廃食油の価格が切り上がる可能性もある。中長期的には、国内に埋もれている家庭系廃食油の回収を進めるほか、産業用パーム廃油を原料として輸入するなど供給の掘り起こしが必要になりそうだ。