パナマ運河庁が6月1日から通航の予約に課す料金を値上げする。日本に輸入される液化石油ガス(LPG)の大半は近年、このパナマ運河を介しており、LPGの元売り各社にとっては仕入れ価格の上昇が避けられない状況だ。元売り勢は卸価格へのコスト転嫁を視野に入れているものの、「会計年度の途中で価格体系の変更を受け入れてもらうのは難しい」(元売り関係者)という。
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全長
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最大幅
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新予約料金
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第1~2閘門
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274.32メートル未満
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32.61メートル
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4万ドル
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274.32~294.44メートル
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32.61メートル
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5万ドル
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第3閘門
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―
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42.67メートル未満
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7万ドル
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―
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42.67メートル以上
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8万5,000ドル
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表=パナマ運河の新通航予約料金(出典:パナマ運河庁)
参考: LPG船"CRYSTAL RIVER" 全長229.00m 幅37.20m
市場関係者によると、6月から値上げされる予約料金の改定幅は、2016年の拡幅工事で開通した第3閘門を通過する場合、7万ドルもしくは8万5,000ドル(上表参照)となり、これに加えて、タグボートによる曳船などのサービス料金も上昇するという。「値上げの幅はVLGC(超大型ガス船)に換算すると1隻(日本に)持ってくるだけで合計10~11万ドル、トンあたりで2.5~3ドルになる」と元売りの関係者は試算している。日本が2020年に輸入したLPGのうち、米国出しはおよそ7割を占め、そのうち大半がテキサス州ヒューストン近郊から出荷され、パナマ運河を通って日本へ到着している(図1参照)。そのため、パナマ運河の予約料金が上昇すると、LPGの輸入価格は大きな影響を受ける。
図1=2020年における日本の国別LPG輸入割合(出典:財務省)
一部の元売りはすでにこの輸入コストの上昇分を、国内の卸業者に向けた販売価格に転嫁しようと検討し始めている。しかし、会計年度の真っ只中で卸業者に対して契約価格(仕切り価格)の値上げを打診しても、簡単に理解されないことは元売り自身も認識ずみだ。パナマ運河については通航を予約できる期間も、従来の1年前から2週間前に大幅に短縮されており(図2参照)、今後は滞船料だけで輸入コストがトンあたり10ドル程度かさむとの見方も寄せられている。「しばらくは負担を覚悟しながら周囲の動向を見ていくしかないが、利益が圧縮される状況が続くといずれは我慢しきれなくなる」(元売り関係者)。
図2=パナマ運河における通航予約期間の変更イメージ
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