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第77回 (2019年10月2日)

 先日、某NGOが主催するパレスチナ難民支援の報告会に行く機会があった。支援の一つで冬場に難民キャンプへ灯油を届ける取り組みをしているという。中東というと個人的に温暖、乾燥というイメージが強く、灯油の需要とは、そぐわない気がしたのだが、そこの難民キャンプはレバノン東部の国境近い山間部にあり、冬には数回雪も降る高地。インタビューを受けていた難民家族の母親は、必要なものは何か、との問いに迷わず「燃料の灯油です。食料は1日くらい食べなくてももちますが、この寒さで灯油がなければ死んでしまいます」と答えていた。映像には木の柱を数本建てて布で覆った小屋とも呼べない空間に数人の家族が肩を寄せ合う姿が映っていた。最近はアメリカの親イスラエル政策の影響で、パレスチナ向けに国連など公的機関からの支援も減少気味だという。NGO団体も限られた支援金を母子家庭や病人のいる世帯へ優先的に割り当てているが、一世帯向けに配布できる灯油は年間20日分にもならないという。

 日本では台風15号の影響から広範囲で数週間にわたり停電が続き、遅いと批判は出たものの、それでも被災経験のある東北など他の電力会社からの応援もあって復旧に向けた作業が行われた。時期的に灯油の記事を書く機会が増えてきたが、自分のいる社会の有難さを感じると共に、同じアジアの西の端で灯油を必要としている人達をふと思い出すことがあって、胸が痛くなる。

(工藤)

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