LNG=4月8~12日:ロシアのガス貯蔵施設攻撃で上昇
DES北東アジア相場は先週、期近着が一時10.05~10.35ドルに上昇した。ロシアがウクライナの発電施設やガス貯蔵施設を攻撃したことで、欧州向けのエネルギー供給不安が台頭。これによる蘭天然ガス(TTF)市況の上昇が、北東アジア着相場にも波及した。 ドイツ国営のエネルギー大手SEFEが冬場に向け、ウクライナのガス貯蔵施設を活用したいとの意向を示している。しかしロシアがウクライナのエネルギーインフラに攻撃を仕掛けたことで、ガス貯蔵施設が使用できなくなるとの可能性が浮上した。現時点で欧州のガス需給に影響は見られないが市場のセンチメントは強気に振れており、世界全体のLNG需給の逼迫を懸念する声も聞かれる。ただ現時点の北東アジアの需給に引き締まり感は台頭していない。日本需要家は「3月の気温低下で在庫消化は進んだものの、在庫はまだ高めに推移している。スポット購入の予定はない」と伝えた。また、JERAと日本製鉄が共同出資している鹿島共同火力発電所5号機(出力30万kW)が6日から、燃料制約のために稼働を停止しているが、これに伴うLNG需要は確認されていない。 シンガポールでは10日、ラマダン(断食)明けを祝う「ハリラヤプアサ」の祝日のため、多くのプレーヤーが休日入りした。中国の需要については現地のユーザーが国産ガスや、中央アジアならびにロシアから輸出されるパイプラインガスを優先的に使用しており、LNG需要が低調だ。さらに「中国経済の回復が進んでいる様子が見られないことから、これから産業用のガス需要が大きく増加するとは考え難い」(日本需要家)との指摘が寄せられている。
【FOB中東・DES中東・DES南アジア】 中東ヨルダンはこのところスポット調達を控えている。在シリアの大使館に空爆を受けたイランがイスラエルに対して報復する構えを示し、中東情勢は一段の悪化が懸念されているが、イスラエルからヨルダンへのパイプラインを介した天然ガスの供給には支障がない。加えて、ヨルダンは太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入にも積極的だ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、ヨルダンは発電容量のうち再生可能エネルギーが39.1%を占める。
【FOB大西洋圏・DES欧州・その他地域】 欧州ではロシアがウクライナのガス貯蔵施設を攻撃したことで、供給減少懸念が高まった。ウクライナのガス貯蔵施設のうち、タンクそのものは地下2,000メートルにあり、直接の被害はなかった。また、現在も操業そのものに影響はない。しかし、今後の攻撃で地上の設備に被害があれば、ガスの引き出しの際には障害が発生するなどの懸念が残っている。「軍事的緊張が一段と高まっているのは確かだ」(トレーダー)。南米アルゼンチンではミレイ政権が4月から都市ガス料金を引き上げた。
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