電力=8月17~21日: 高騰、猛暑とテクニカル要因で買い急増
卸電力市場は高騰した。Rim Indexスポット(翌日物取引)価格の24時間・中心値は、前週の平日(8月17~21日受渡)の平均でみると、前の週(8月10~14日受渡:10日は祝日)と比べ東日本が1kWh当たり(以下同)5.99円高(101.7%上昇)の11.88円、西日本が6.46円高(143.9%上昇)の10.95円。猛暑が西日本だけでなく東京を含む地域にも広がり、冷房需要が大きく膨らんだ。加えて、買い手側に由来するテクニカル要因が、相場上昇を加速させたもよう。前の週が旧盆に伴う低需要期間だったため、比較で価格の上昇幅が大きくなりやすかったが、絶対水準でも高値が付いた。日本卸電力取引所(JEPX)の1日前市場の21日受渡の1コマ(30分間)で、北海道を除く8エリアの約定価格が今夏最高の49.99円を記録。東日本と西日本の中心値の格差は0.93円と、前の週の1.40円から縮小した。
17日から21日の予想最高気温(前日発表)は、東日本の東京が32~35度で、このうち3日間が「猛暑日」の基準である35度。西日本の大阪が36~38度で、3日間が37度。熱中症の危険性が高まる気温水準を背景に冷房機器の使用率が高まったと考えられる。特に西日本は、35度を上回る水準地域が多く、需要の強まりに弾みが付き、価格の上げ幅も東日本より大幅になりやすくなった部分がありそう。高騰を演出したテクニカル要因は、買い手の市場調達比率。新型コロナウイルス感染拡大の余波で経済活動が停滞しているため、これまで買い手は割高の相対契約による電源購入を避け、低価格で推移していた市場での調達比率を高めた。8月の後半に入り気温が上振れし、急きょ市場で想定以上に買い増しする必要に迫られた格好。JEPXでは40円台の約定が頻発した。17日受渡の夕方の1コマは、全9エリアが、その時点での今夏最高値の45.00円で約定。19日受渡の夕方の1コマは、西日本の6エリアで45.00円が再発。さらに、21日受渡の夕方の1コマでは、北海道を除く8エリアが49.99円で約定し、高値更新。18日と20日受渡でも一部のコマで40円台を付けた。
JEPXの1日前市場では、最も市場規模の大きい東京エリアの平均11.97円と、前の週と比べ6.05円上昇した。気候条件の違いや本州との連系線の制約により独自の動きになりやすい北海道エリアは、同6.75円高の12.57円。両域間の価格差は、東京安・北海道高の0.60円と、前の週の東京高・北海道安0.10円から逆転した。エリアを結ぶ連系線で工事があり、北海道は本州から電力の供給を受けにくくなった。加えて、北海道の中核都市である札幌の天気は不順で、太陽光発電も低水準にとどまったとみられる。東北エリアの平均は11.28円と、東京を0.69円下回った。東京エリアは、週平均の夜間価格が昼間に比べ小幅にとどまった。ピーク時を含む昼間の価格急騰で、心理的な要因が強く働いた部分がありそう。 西日本の最大市場である関西エリアの平均は11.12円と、前の週と比べ6.61円の上昇。価格が他地域と比べ割安水準で推移することの多い九州エリアは、同5.78円高の10.19円だった。両エリアの価格差は0.93円と、前の週の0.10円から広がった。九州の中心都市である福岡は、晴れ間に恵まれ、予想最高も35度近辺と比較的穏やかだったことなどから、他エリアに比べ上げ幅も若干、小さくなったと考えられる。関西と九州の夜間価格は東京と同様に、比較的落ち着いた動きだった。
JEPXのスポット取引(1日前市場)は17日受渡から21日受渡で、システムプライス・24時間の平均が、前の週と比較して5.63円高(111.7%上昇)の10.67円だった。同期間の1日平均の約定量は約10億5,700万kWhと、前の週より9,600万kWhの大幅増。
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