サウジアラビア=アラムコがIPO発表、製油所建設でインドと予備契約
サウジアラビアでは、国営石油会社のサウジアラムコが今年12月にも国内の証券取引所で新規株式公開(IPO)を実施し、資金調達に乗り出すことが明らかとなった。今回は、サウジにおける最近のエネルギー動向について取り上げる。
サウジアラムコは11月3日、IPOのプロセスを開始し、サウジアラビア証券取引所「タダウル」に上場すると発表した。ただ、公開する株式数などの詳細は明らかにしなかった。同社はその後、11月17日に声明を発表し、IPOで総数2,000億株のうち、1.5%を売り出す方針を明らかにした。資金調達額は200億ドルを超す見通しという。
一方、サウジアラムコは10月末、アブダビ国営石油会社(ADNOC)と共同でインド国営バハラート石油(BBCL)が建設する製油所(精製能力は日量120万バレル)の権益50%超の取得に向けた予備契約を締結したことを明らかにした。
サウジアラビアはまた、原油地下備蓄施設の使用でもインドとの関係を強化している。インド国営原油備蓄会社(ISPRL)は10月末、サウジアラムコと原油地下備蓄施設の利用に合意したと発表。ISPRLはケーララ州のパドゥールにある原油地下備蓄設備に保有する250万トンのうち、4分の1をサウジアラムコに提供するとしている。
このほか、サウジアラムコは10月29日、サウジのジーザーン発電プロジェクトで、米エアプロダクツ&ケミカルズなどと合弁会社(JV)を設立する計画があると発表した。JVには、サウジの電力大手であるACWAパワー・インターナショナルなども参画するという。
ところで、サウジアラムコは11月6日、フレアガス排出量を2030年までにゼロにするという世界銀行の取り組み「ゼロ・ルーティン・フレアリング運動」に参加すると表明した。この運動はフレアガスと代替フロンの排出量削減を目指すものだ。アラムコは近年、脱炭素社会を目指す政策を打ち出し、水素燃料の促進、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)などを推進するため、再生可能エネルギー分野などへの投資も増やすなど、環境重視の姿勢も国内外にアピールしている。
サウジアラビアがアラムコのIPOや環境重視策を推し進める背景には、深刻な財政赤字の早期解消が求められるためとされる。アルジャダーン財務相は11月初旬、同国の財政赤字の状況について、2019年は 国内総生産(GDP)の4.7%を占めるとの見通しを示した上で、20年は6.5%にまで拡大するとの見解を示した。