新春特集=バンカー相場、欧州の動きを読む
欧州はどう動くか。2021年1月1日より北海・バルト海を排出指定海域(ECA: Emission Control Areas)は窒素酸化物(Nox)の 3次規制を開始した。対象は2021年1月1日以降に寄港し、北海およびバルト海を航行する新造船だ。環境規制に関し、世界先端を進む欧州にとって残渣油由来の燃料油ではなく、LNG、水素、電力への燃転が進んでいく動きは避けられない。原油由来の燃料油からの脱却を進めるべく、石油会社は減産を進めざるを得ない。ただし、既存の燃料需要のため必要最低限の生産は必要だ。
既にECAとして欧州全域がカバーされているので、主要な燃料油は硫黄分0.1%以下のULSFOあるいはLSMGO。スクラバー搭載船と大型外航船がHSFOとVLSFOの主な需要家となる。HSFOはロシア国営企業ロスネフチから供給可能だが、品質懸念から需要家間では売買がなかなか進まないようだ。ただし、供給元が限られるほか、生産量も限られているため価格そのものは高めだ。
ロッテルダム港では、2015年~2020年にかけてLNGバンカリングを利用する船舶に対し、入港税を10%割引く仕組みを導入した。ただし、LNG、水素、電力を動力とした船舶はオランダ~ドイツやバルト海といった狭い範囲、ならびにRo-Ro船など航行が定まっている船でしか使用できず、大型タンカーや長距離航行の船舶にはまだ適していない。そのロッテルダム港では、カーボンニュートラルな港を目指し、環境整備を進めている。そのため今後は入港料金が値上がりする可能性もありそうだ。
また、2021年1月31日に英国がEUから離脱するが、概ね欧州と英国間で環境規制や円滑な港湾業務を行うよう取り決められており、環境規制がとん挫することはないとみられる。
米国では2020年に発生した森林火災で米西海岸の港が一時的にバンカー供給を中止するなど、多大な影響を与えた。同国でも新型コロナの感染拡大を受け、原油需要が減少しており、各製油所は稼働を落とすなど生産調整を続けている。ただし、トラック向けの軽油需要は底堅く、一定水準を維持している。バンカー需要は他国同様、HSFO供給減とVLSFOバランス、LSMGO供給微増の動きが予想される。
一方、欧州航路を見据えて北米のタコマ、ヒューストン、ニューアーク 等の大きな港ではLNGバンカー供給の地盤を整え、2023年ごろにLNGハブ港として開発を進める方針だ。
南米では、ブラジル国営ペトロブラスが水素燃料船の開発に力を入れている。国営企業から供給されるため、今後のバンカー価格は高値で推移する可能性が高い。