新春特集=バイオマス、2020年を振り返る
脱炭素化への機運が高まり、再生可能エネルギーの主力電源化が推進される中、自然条件に左右されず安定的に発電できる電源としてバイオマス発電にかかる期待は大きい。リム情報開発では2019年1月下旬に「バイオマスレポート」を発刊し、バイオマス燃料の価格評価を行ってきた。今回は、輸入バイオマス燃料(木質ペレット・PKS)を取り扱う市場関係者に取材し、2020年がどのような相場動向となったかを振り返るとともに、2021年のバイオマス燃料市場がどのように動くかなど、予想と注目すべきポイントをまとめた。
2020年はどんな年だったか。木質ペレット相場は「比較的安く推移した」との指摘が多く寄せられた。日韓ともにスポット需要が弱かった一方で、生産国では供給が増加。供給が需要を上回る状況が続き、相場の重しとなった。
各市場の価格動向をグラフにまとめた(下記参照)。東南アジア積み韓国向け相場では、新型コロナの感染拡大が生産国と消費国それぞれに影響を与えた。ベトナムは主要産業の中国向け家具輸出が減少し、工場の稼働率が低下。韓国向け木質ペレットの原料となる端材の供給が減少している。
また、マレーシアでは感染拡大防止策としてロックダウンが実施され、供給に逼迫感が生じたため、相場が上向いた。ただし、消費国の韓国は新型コロナの感染拡大で経済活動が縮小し、電力需要が後退。韓国では国内未利用材由来の木質ペレットを奨励する政策がとられたため、輸入木質ペレットへの買い気が鈍り、相場が軟化した。冬場の需要期を迎えても相場は低迷し、100ドル前後で推移し、精彩を欠いた。
一方、日本向けは新型コロナの影響は限定的だったとの声が市場関係者から聞かれた。日本向けは韓国向けと異なり、原木から加工を経て木質ペレットが製造され、他産業の影響を受けにくく、コロナ禍においても供給が滞らなかった。このため、相場への影響は限られたようだ。日本向け市場の拡大を睨み、生産国では新規工場の立ち上げや増設が進んだが、大半のバイオマス発電所がターム供給契約で必要分を賄えており、スポット相場は上伸力を欠いた。
北米向けは、主要消費国の欧州で新型コロナの感染が広がり、電力需要がひどく落ち込んだため価格が暴落。東南アジア積みを下回るスポット販売価格も伝えられた。秋以降、欧州での新型コロナ感染第二波の発生で需要は戻らず、東南アジア積み日本向け価格と近接する水準で推移した。
PKS相場はどうだろうか。大型発電所が立ち上げに伴う需要増は織り込み済みで、上昇基調と想定されていたものの、2020年前半の高騰は予想外だったとの声が大勢だ。新型コロナの感染拡大でロックダウンの措置をとったマレーシアからの出荷が滞り、相場は急伸。マレーシア積みの供給難からインドネシア積みに需要が流れたことでインドネシア積み価格も押し上げられた。
しかし、その後は供給業者の在庫増や関税の引き下げ観測を受けてインドネシア積み価格は下落。マレーシア積み価格は堅調な国内消費と感染拡大第二波により供給のタイト感が続いたものの、インドネシア積み価格の割安感が弱材料視され、上値が重かった。