記者の眼記者の眼

第183回 (2023年2月15日)

 2023年大河ドラマの主人公の徳川家康が後年、二代将軍秀忠の正室のお江に宛てた書状に「神君御文(しんくんおんふみ)」と呼ばれる子育て論がある。世継ぎの家光を育てる上での心構えを書いたもので、この中に、「人に得手不得手 好き嫌ひあり 偏するべからず 無用と思はれるものも 時に有用のこと多し」と書かれている。よく、「数学を勉強しても将来役立たないよ」というように、「役に立たない」と決めつけてしまうことがあるが、家康はこれを否定している。

 

 自身の例で恐縮だが、自分がリムに入って役立ったのは地理の知識だと思う。どの国でガスの産出が多いとか、この都市がどこにあるとか、"学校で習ったこと"が本当に役立った。また、大好きな歴史を通じて得たこともある。第一次世界大戦におけるドイツについて調べた際にF.ハーバーの存在を知り、彼がアンモニアの製造方法でノーベル賞を取ったこと、また、同時代のツェッペリン号等、水素の利活用を考えていたということを雑学的に知った。

 

 これが、リムのクリーンエネルギーレポートに役立つとは思ってもみなかった。「ああ、あの話か」というのと、「水素?アンモニアって何?」というのでは最初の一歩が違う。役に立つ、立たないという基準は、人生が終わってみないとわからないのかもしれない。いや、むしろ「何だか知らないけれど、面白そう」という発想の方が生きていくうえで楽しいし、記者の姿勢として大事なのではと思う。

 

(工藤)

 

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