第151回 (2022年6月22日)
ダニエル・ヤーギンの新著『新しい世界の資源地図』はこれからの世界を占ううえで、多くの示唆に富んだ一冊だ。米国、ロシア、中国という、エネルギーの鍵を握る国の歴史を丹念に追いかけており、いま世界で起きていることが必然だったと思い知らされる。著者はこの本を執筆している時点で、ロシアによるウクライナへの侵攻が不可避であることを予見していた節もある。
未来に向けた話も、決して明るいものではない。特に、電気自動車の普及が進み、リチウムイオンバッテリーの必要性が増すにつれ、その資源争奪戦が激化するという予想には懸念を抱いてしまう。石油よりも特定の地域に資源が集中しているため、輸入のポートフォリオを組み立てることは、どの国にも困難を強いるだろう。そして、将来を見据えた際にもっとも不安になるのが、米国と中国という思想的に異なる二つの大国が、世界を二分しかねないという点だ。すでにエネルギー分野では、2018~19年に両国で高関税が課されるという形でその兆しを実感した。
一昨年に人気を博した『FACTFULNESS』(ハンス・フロリング他著)は、世界は良くなっている、メディアの情報に惑わされるなという趣旨だった。しかし、『新しい世界の資源地図』を読むと、混乱の火種はまだ世界中のいたるところにあると思わされる。身の回りのことだけを見つめて生きていくべきか、大局に立って慣れ切った日常をいち早く変えていくべきか。正解は自分に委ねられている。
(志賀)