記者の眼記者の眼

第102回 (2020年9月16日)

 新型コロナの感染拡大が続いている。一方、世間の人々は、新しい生活習慣でウィズコロナを乗り切ろうとしている。

 

 先日見かけた記事のなかで、新型コロナが暮らしに与えた影響のうち「よかったこと」として「今まで、必要性に疑問を感じつつ継続していた習慣がなくなったこと」という声が取り上げられていた。具体的に挙げると「時間と労力を奪うPTA」「鬱陶しいだけの職場の上司との飲み会」「わずらわしいだけの親戚との付き合い」がそれに該当する。

 

 気が付けば筆者の在宅勤務期間も半年が過ぎた。仕事用の机、椅子を買い揃え、日頃の業務は会社支給のパソコン、会議はオンラインという流れが出来上がっている。新型コロナ収束した後、無くてもよかった習慣に「会社に行って仕事をすること」「顧客を訪問して面談すること」が加わる可能性もゼロではない。

 

 一方、在宅勤務が長く続くことで、考え方が独善的になることが懸念される。閉鎖空間でのコミュニケーションを繰り返すことで、いわゆる「エコーチェンバー化」が進むからだ。確かに、隣で耳をそばだてる口うるさい上司はいないし、辛辣な意見をぶつけてくる取材先を訪問することもない。在宅での取材がルーティンになると、耳障りな意見を自然に避けるようになりがちだ。

 

 大御所と呼ばれる芸人が、周りにおだてられているうちに、世間の笑いの軸からずれていく悲劇。人の振り見て我が振りなおせ。まさに良薬は口に苦しである。

 

(小泉)

 

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