記者の眼記者の眼

第92回 (2020年4月29日)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。在宅勤務が続くなかで感じるのが、情報との接し方の重要性だ。

 

 テレビでは連日、政府の対策について門外漢のコメンテーターが専門家と並び、見解を述べる。インターネット上でも同様だ。影響力のある個人、いわゆるインフルエンサーが、政府や自治体の方針に対して持論を展開する。彼らの多くも感染症や疫学、行政の専門ではない。マスコミ不信が叫ばれ、ネットの影響力が強まる昨今、ネット上の個人がその専門性を問わず、人気次第で盲目的に支持を得ることも多い。極端な意見や虚実ないまぜの情報が日々"バズ"り、拡散している。

 

 右も左もコロナコロナ、自粛疲れのなかでこうした情報を浴び続けることに、私自身、嫌気を感じることもある。自粛の程度や規模、期間について、何が正しいのか、いつまで続くのか。苛立ち疲れた心では判断力が鈍りがちだ。気が沈む話には目を背け、自分に都合の良い情報だけを求める。だが聞き心地の良い意見にばかり耳を傾けていれば、考え方や視野が偏り、全体像を見失う。本当に得るべき情報を逃しかねない。

 

 リム情報開発は、分野こそ異なるものの、日々情報を扱い、世に届ける立場にある。市場に出回る噂だけでなく、時に買い手に、時に売り手に寄り添い、耳を傾ける。そうして初めて、市況の全体像に近付くことができる。今回の異常事態で、自分が記者として追求すべき姿を意識することとなった。

   

(犬塚)

 

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