記者の眼記者の眼

第87回 (2020年2月19日)

 

 誰がいつ、どのメディアを通じて発信したかは、情報を理解するうえで大事な要素だ。最近の日本では影を潜めているが、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏にまつわるニュースに好例があった。

 

 彼女は多くのSNSで公式ページを開設し、多くの人がフォローしている。公式ツイッターに昨年12月、スウェーデンでのCOP25会議からの帰路、乗車した列車内で座席を確保できず、彼女が通路へ座り込む姿が投稿された。これに対し鉄道会社は、謝罪とともに彼女が1等客車に乗車した際に鉄道会社が提供したサービスについても触れてほしかったと、投稿で応じた。

 

 これはどちらも真実で、着席した区間と、できなかった区間が存在した。各国高官に食って掛かり、若者の支持を集める彼女にとって、1等客車の利用は伝える必要がない。鉄道会社は、彼女が自分たちのサービスを肯定的に投稿すれば、格好の広告となる。

 

 このように、立場によって情報の重要度は異なり、SNSであれば各個人の思惑により左右される。これを理解するのは取材記者としても大事だ。世の中で起こっていることを正確に知るため、できる限り多くの人から情報を集めることは欠かせない。

 

 毎日のニュースでも幅広く情報に触れることが重要だ。世の中で起こっている真実に近づくためには、日本語のメディアだけでは不足することも多々ある。新型肺炎の感染が広がっているが、日本政府や厚労省による発表が信頼に足り十分であることを願う。

  

(北村)

 

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